東京台湾あっちこっち

東京にすむ30代半ば、台湾を好きになりいちから中国語。

トミー・ウンゲラー、、アンゲラー?、、ウン?アン?

すてきな三にんぐみ

子供の頃、我が家は泣いても叫んでもゲームを買ってもらえませんでした。そのかわり、というのか、本だけは頼めば買ってもらえました。なので、家には相当数の絵本、児童書があったのです。

その中でも、絵本作家で一番のお気に入りがトミー・ウンゲラー!、、アンゲラー?カタカナ表記が今は色々ありますが、今回は慣れ親しんだウンゲラーでゆきましょう!

 

ウンゲラーは1931年に現在のフランス、アルザス地方に生まれたイラストレーター・絵本作家です。このアルザス地方は戦争に翻弄された土地でもあり、ウンゲラーが生まれた頃はフランス、そして第二次世界大戦中はドイツ、そして戦後再びフランスに戻る、というドイツとフランスの狭間にあります。ウンゲラー自身は自分を「アルザス人だ」と認識しているようです。

 

たった60ドルと沢山の絵を抱えてアメリカに渡り、イラストレーターとして雑誌やポスターなどの広告の仕事などでなかなかに社会を風刺した作品を発表していきます。

 

私が身近に親しんだのはやはり絵本です。世界中で大人気のウンゲラーの絵本ですが、やはり一番有名なのは『すてきな三にんぐみ』だと思います。

恐ろしい泥棒の三人組が孤児の女の子と出会い、、、といようなお話。翻訳は今江祥智さんです。私が子供の頃、ウンゲラーは今江祥智さん、ロアルド・ダールは詩人の田村隆一さん翻訳、というのが多かった記憶があります。

 

私としてはお話、ストーリーよりもずっとずっとイラストによるウンゲラーの世界が好きだった、というのが正直なところ。

それでも『ゼラルダと人喰い鬼』でゼラルダが体調を崩したお父さんの代わりに市場へ行く途中で人喰い鬼に会うのですが、お父さんの体調を崩した理由が「娘のゼラルダが作ったリンゴ団子を食べ過ぎたため」という親としてなんとも情けない理由だな、おい!など、なかなかにクスッとしてしまうものではありますが。

 

でもまあ、ウンゲラーと言えば私には何より彼のイラストにより生み出されるハチャメチャな世界!です!

ラシーヌおじさんとふしぎな動物 (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

私の一番のお気に入りがこの『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』!あ、これ田村さんと麻生くみさん翻訳だ。このコンビも児童書翻訳といえば!のコンビですね。

この本のイラストは本当にウンゲラーワールド全開!壁にかかる鹿の頭の剥製から舌がダラーーンと垂れ下がり、枠を飛び越えてページに入り込む動物、と各ページの端の端まで世界が広がります。更に後半の大混乱の見開きページになると、頭に時計のぶっささった男、パニックでヅラのとられた女、燃えるカーテン、人に向かって放水する消防士、そしてそれを傘で受け止めるおじさん、黄色・緑色・青色の顔色になった三人組の男たち、飛び上がる犬、顔を黄色のペンキで塗られたおじさん、頭に傘の刺さった紳士、、、と書き始めたらキリがないくらい、隅々までずっと眺めてケタケタこの滅茶苦茶な世界を楽しめるのです!

小さい頃、考えた色んなちょっと残酷だけどくだらないけど面白いことがいーーーーーっぱいつまっているんです。

 

お気づきだと思いますが、そう、ウンゲラーの絵は、簡単に言ってしまえばブラックユーモアの塊!でもそれは、「やっちゃダメ」とか「ちゃんとしなさい」とか言う保育園や学校でどんどん教えられるそんな世界を、軽やかに越えていくパワーとユーモアに溢れているんです。この本を読んでいる間はダメも正しいも無くって、なんだってあり!そんな愉快が詰まっています。

 

エミールくんがんばる (世界の創作絵本B)

さらにウンゲラーの絵本ではタコやヘビなど、欧米での嫌われ者とでも言えるような生き物たちが主人公だったりします。

大人向けのイラストでもショッキングなのにどこか面白さ軽やかさ、それゆえの毒をはらんだ作品が沢山あります。性を題材にしたものも多いですし。

 

2007年にはフランスのストラスブールにトミー・ウンゲラー美術館が開館し、絵本作家としての作品や大人向けのもの、更に収集したおもちゃの展示まで、アーティスト・ウンゲラーの様々な側面が見られるようです。

いつか、いつか、絶対に行くんだ!!と心に決めている場所の一つです。

 

子供の頃を思い出すのか、今もウンゲラーの絵本を読むとワクワクしていつもとは違う世界に入り込める、何はともあれ理屈抜きに楽しい!そんな気持ちでいっぱいになります。大人が読んでも子供が読んでもきっとそれぞれの面白いがありますよ。

ゼラルダと人喰い鬼 (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

はげたかオルランドはとぶ (世界の傑作絵本B)